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先月号にひきつづき全射、単斜のお話。
あの年金記録の不備は本来どうあるべきだったのでしょう?
数学的観点からのぞいてみると・・・。

いやいや、ようやく待ちに待っていた梅雨が明けましたね。 これでどこに行くにも全単射のことばかり考えないで済みますもんね。 ヨカッタヨカッタ。 (詳しくは、前回の『傘と私は全単射』をお読み下さい)

さてさて。 毎回たらたらと脈絡の無いことをお話し続けているくらのですが、 今回考えたいのは、数学にセンスは必要かということ。 巷でよく話題になりますし、私自身も時々考えます。
高校数学ではもの足りず、大学に行って数学を勉強した私が今思うのは、 数学にセンスはそれほど必要ないということです。

もちろん学者や研究者を目指そうとすれば、 かなりキラリと光るセンスがないと厳しいに決まっていますが 大抵のことは反復学習でなんとかなってしまうものです。
「逆上がり」って最初は全くやり方が分からなくても、 繰り返し繰り返し反復練習をすることで自然と覚えてしまいますよね。 あれと一緒です。 脳に一度そういう回路を構築してしまうことによって、 大抵のことは何とかなってしまうものなんだと。
ただ、大きく係わってくる要素に「キライじゃない」ことは重要です。 どんなに得意でなくてもキライにさえならなければ 何らかの道は拓けてしまいます。 周りの持っていき方が大事だということでしょうか。

ちなみに私自身は高校時代に出会った先生がキーパーソンです。 この先生に出会っていなければ、恐らく数学科を選んでいなかったかと。
こういう「人との出会い」はめちゃくちゃ重要で、 のちのちどういう影響があるか分からないものですね。

話がだいぶ数学から逸れました!
少しでも心理的な抵抗感を感じてしまうと、どうしても数学と向き合う、 取り組む時間が減るので、ますます数学との距離が開いてしまう。
そういう話でした。
この「距離」にまつわる話では以前、「距離と道のり」の話をしました。 距離は最短距離を表し、道のりは延べを表すのでした。 ところが、実は数学には一口に距離といっても色々な距離の概念が存在します。
ユークリッド空間、ユークリッド距離、距離空間、 ハウスドルフ空間、リーマン空間・・・ 記憶が怪しいものも多々含まれますがそれはまあご愛嬌! とにかく、多種多様なんです。 結局、これらは全て「位相空間」でくくることが出来ます。 位相空間とは、topological spaceと訳されます。 集合に要素どうしの近さや繋がり方に関する情報を加えたもののことを言います。 ある集合に位相的構造を与えることをその集合を位相づけるといい、 位相づけられた集合はもう、それ自体、位相空間と呼ぶことが出来ます。 単なる集合であったはずなのに、そこに「空間」という概念を 発生させることができるんです!

ある空っぽじゃない集合Xがあったときに、集合 X の位相とは
次の条件を満たす X の部分集合の族 O を言います。
(以下、ただの定義なので分からなくても大丈夫!) 1.X ∈ O ,空集合 ∈ O.
2.有限個の U1, ..., Un ∈ O について,U1∩・・・∩ Un ∈ O である.
3.族 Uλ ∈ O, (λ∈ Λ) について,∪λ∈ Λ Uλ ∈ O である.

あらあら、さっそく数学ではお馴染み、でも数学に触っていないと
よく分からない記号が大量に出てきましたね〜。でも大丈夫。
強引に翻訳すると、こんな感じかな?
・中身が空っぽな集合も、Xという集合自身も、その位相に含まれていること。 ・位相の中から任意に二つ集合を取り出すと、
その共通部分を取った集合も含まれていること。 ・位相から任意に部分集合を取ってきたものを片っ端から集めていくと、 集めた集合自体も位相の要素として含まれていること。 これらの条件を満たしてね♪そうすれば集合X-上の位相が、
位相「空間」になるということなのです。

Xという集合自体は何でもOKなので、例えば、
X={2,3,4,5,6}など、単に自然数の一部だとしても問題ありません。
そうすると、この位相を定義することのスゴさがちょっと見えてきます。
誤解を恐れずに、かなり大雑把にお話するならば、こういうことです。
つまり。
「空間」というと日常生活では3次元を想像しますし、
点である要素で出来た「集合」をいくら集めたって
そこに「空間」があるとみなすことは、ちょっとしにくいと思うんです。
でも、数学上は一見無味乾燥な数字や記号でしかなかったところに 一定のルールを導入することで、世界を作り出すことが
いとも簡単に出来てしまうんです。
これってスゴイと思いませんか!? 私は、実に芸術的で人間ってすごいな、と感心しちゃうんですよね。
数学の概念を完璧に理解するのは難しいし、???ということは 頻繁に起こりうる、いや、むしろそういうことの方が多いんですが、 でもやっぱり偏愛は尽きないんですよね。 なぜなんでしょう?
きっとこれは偏愛としか言いようがないんです。 どんなに数学が私のことを拒否しようとしても、 なんとなく気になってしまう。

ちなみにこの、位相空間の話。 厚い教科書が1冊出来上がってしまうくらい奥の深いもので、 大学に入学すると最初に習う部分の一つです。 でも、当時の私には難しくて仕方なく、 あっもちろん今だって難しくて忘れていることが大部分ですが、 それでも久しぶりに「集合位相入門」という当時のテキストを 懐かしく読み返している私ってば、 やっぱり数学が好きなんだなあと改めて思ってしまったのでした。

著者PROFILE
倉野 麻里
テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ。。。」離れてみてわかった数学への愛。いや、私から数学への一方的な愛!!そんな数学への偏愛を恥ずかしげもなく語っちゃいます。
 
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